ワイルドサイドへの執着

童子の時は語ることも童子のごとく、思ふことも童子の如く、論ずることも童子の如くなりしが、人と成りては童子のことを棄てたり

映画

年内にキメろ映画ベスト10 ~2023編~

クソったれ労働の隙間を縫って今年も映画を観ていたよ。新卒一年目の去年よりは大分本数増えてるよ良かったね……ということで、Twitterのハッシュタグから派生したいつもの映画ベスト10。以下はFilmarksに投稿した文章を加筆・修正したものになります。内訳は…

『ゴジラ-1.0』――安心してください、履いてますよ

まず、山崎貴という男について語らねばならない。日本映画界屈指のヒットメーカー。VFXを駆使し邦画離れした映像を創造する監督。『ALWAYS』で日本中を感動の渦に巻き込んだ悪しきノスタルジーの元凶。

年内にキメろ映画ベスト10 ~2022編~

恒例の年が明けてから発表する映画ベスト10、今年から労働を始めたので本数が例年と比べて激減しております。ファック。来年(今年)はどうなることやら……ということで、Twitterのハッシュタグから派生したいつものやつです。以下、Filmarksに投稿した文章を加…

『すずめの戸締まり』――全部アリバイに見える

私は、新海誠の映画を前作である『天気の子』しか観ていない。なので『すずめの戸締まり』を観に行った理由は、新海誠という作家目当てではなく、あくまでも「『天気の子』を作った監督の新作だったから」だ。

年内にキメろ映画ベスト10 ~2021編~

去年に引き続き、相変わらず災難続きだった世の中だが、暇だったので映画を観ていた。いよいよ今年はそんな余裕もなくなってくると思われる。Twitterのハッシュタグから発生した映画ベスト10、今年は邦画が29本、洋画は10本。以下はFilmarksに投稿した感想を…

『アイの歌声を聴かせて』――百合を試すリトマス紙として

※この記事は映画本編とは一切関係ありません! 公開初日に『アイの歌声を聴かせて』を観たが、期待以上に良く出来たアニメ映画だった。高校生である彼女ら彼らの青春という類型的な題材を扱いながらも、「歌」という映画にとって扱いの難しい要素を、土屋太…

『ゴジラvsコング』――いつまでも怪獣映画を観ているお前へ

怪獣映画において、特撮を使用していないパート、ミニチュアや合成やCGではない、つまり怪獣やメカといった一目でワクワクさせてくれる要素を取っ払った生身の人間が出張るシーンのことを俗に「人間ドラマ」と言う。この定義は制作、現場レベルなら便宜上機…

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』――これで終わったと思うなよ

あらかじめ断っておくと、自分は「エヴァンゲリオン」という作品に思い入れはほとんど無い。興味があるとすれば特撮とアニメを掛けた映像的表現やそこから影響を受けた後年の作品、俗にセカイ系と言われる諸作、または樋口真嗣を始めとした庵野秀明から広が…

年内にキメろ映画ベスト10 ~2020編~

誰彼構わず大変だった年だと世間的には認知されているが、恐らく煽りを受けなかった人間として上位にいると思われるので余りにも図々しい。

「百合映画」完全ガイド――「百合」という宗教の場

蓮實重彦から始まる映画ガイド、ということだ。本書は百合を発見できる映画を古今東西300本以上紹介していて、日本→海外→アニメの順でリストアップされているのだが、その1本目、日本編である1933年の『港の日本娘』紹介文の出だしが「本作は江藤淳と蓮實重…

『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』――世界は二人の為にある

「劇場版」とタイトルに付くのは当然TVシリーズからの続編だからだ。TVシリーズからの積み重ねの先にある決算としての物語であって、予習して併せて観るのが当たり前だろう。

『AKIRA』――黙示録に立ち会うということ

映画を観る楽しみには色々な種類がある。映画なんて「面白い」か「つまらない」のみで判断すれば良いだろうという考えもあるが、なまじ本数を重ねていくにしたがって哀しいかな、生半可に無駄な知恵が備わってしまうのが映画好きのさだめだ。

『ANNA/アナ』――美少女ガンアクションの贖罪

長く美しい脚をエロティックに披露してくれ、『映画は女(エロス)と拳銃(タナトス)』を地で行ける。――石井隆『黒の天使』Blu-ray BOX 特製ブックレット 女と銃という組み合わせ。それはある意味で男の願望を最も端的に具象化したものと言ってもいい。綺麗で色…

『ガス人間第一号』――アウトランドスの恋

よく「恋は盲目」などと言われたりするが、実際にその通りに目が見えなくなるとしたら困ったものである。この場合の「盲目」というのは「自分でも制御できない感情に振り回されて周りに気を配れなくなる」というような意味だと思われるが、恋愛というのは無…

『楽園』――業と鼓動

人は人をどう判断するのだろうか? 実際に生身と生身が出会うより前に例えば顔写真がある。「人を見た目で判断するな」とはよく言ったものだが、顔の造形、表情でその人間の知りようもない内面を勝手に推測して捏造してしまうのが常ではないか。

『狼煙が呼ぶ』――ANARCHY IN THE SKY

いつも通っている映画館の前で見覚えのある人が煙草をふかしていた。朝の10時頃である。この映画館は歩道に隣接している位置にあるのだが、ここで喫煙するというのは所謂路上喫煙に当たるんじゃないのか、大丈夫なのかな?と少し不安になった。(詳しくは知ら…

『アイネクライネナハトムジーク』――人と出会ってみよう

画面に一人の男がいる。その男は何やら通り過ぎる人々にアンケートを実施しているようである。しかし上手くないのか中々捕まらない。街頭モニターから賑やかな音が聞こえる。フッ……と夜の街で空しくなるような、手を止める。

『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』――もしかしたら『エンドゲーム』が日本で作られない理由なのかも知れない

よく考えれば「お前達の平成って……醜くないか?」も変な台詞だ。元号である平成の歴史を指して醜いとする言説はニュースや週刊誌で評論家等が語るならまだ理解できるが、実際に本作『Over Quartzer』で発するのは子供向け特撮ヒーロー映画のラスボスなのであ…

『天気の子』――少年よ、銃を取れ(取らない)

もしも罪を犯し 世界中敵にまわしても あなたと眠る夢を見続けてたい――aiko 「あした」 えー、映画、ひいてはフィクション全般は野蛮であってほしいと願っている。教科書で教えてくれるような道徳的で社会の規範に沿った「良い」とされる概念をブチ破って、…

『岬の兄妹』――走れない現実

これは何事もそうなのだが、人は自然と慣れるように出来ている。最初は心に留めておいたのに時間が経つにつれて忘れたりどうでもよくなったりする。嬉しかったり苦しかったり、時々の様々の感情を忘れていくのも慣れの効用の一つである。

『こんな夜更けにバナナかよ』――理屈ではない世界の仕組みについて

わがままもいっぱい言っただろうけど、でもそのわがままというのは、あくまで健常者から見たわがままなんですよね。『こんな夜更けにバナナかよ』って、動けないなら、食べるなよっていう論理なんだよね。――「キネマ旬報」2019年1月上旬特別号 大泉洋グラビ…

フォーラム福島「現実対虚構inフクシマ 樋口真嗣・丹治匠トークライブ」レポート

1月28日にフォーラム福島で行われた「現実対虚構inフクシマ 樋口真嗣・丹治匠トークライブ」に行ったのであった。 www.forum-movie.net

『あゝ、荒野』――殺されるくらいなら、ブッ殺してやる

前篇、後篇の形式で公開され、その合計の上映時間が305分(5時間5分)という事から分かる通り、まず歪な映画であるのは間違いないだろう。新宿新次(菅田将暉)とバリカン建二(ヤン・イクチュン)を取り巻く人々の物語というだけで十分なのに、「自殺抑止研究会」…

『アウトレイジ 最終章』――さらば愛しのヤクザ共

鑑賞後、というより鑑賞中どんどん加速していった形なのだが、面食らったのである。北野武の映画と言えば「面を食らう、不意を突かれる」という点が大きな魅力の一つだと思うが、今回の感覚は『TAKESHIS’』を始めとする所謂「自己検証三部作」の印象に近い。

実写『亜人』は実写『進撃の巨人』である

実写『進撃の巨人』(以下実写進撃)フリークとして劇場で驚いた。最近流行りの「これ実質○○じゃん」が我が身に降りかかるとは思ってもいなかったからである。

『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』を三池崇史監督作品として観る

年に二~三本ペースで公開される三池崇史の映画を足しげくチェックするのは、言うまでもなく映画好きの常識である。その内の一本として8月4日に公開されたのが『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』だが、これも過去の三池作品と同じよう…

人間は死ね!『キングコング:髑髏島の巨神』

以前『シン・ゴジラ』の不満をブチ撒けた記事で「怪獣映画は物ブッ壊して人ブッ殺してナンボ」と書いたが、『髑髏島の巨神』は孤島が舞台故に「物をブッ壊す」快感には乏しかった、しかしそれを補うが如く「人をブッ殺す」快楽(ここでは怪獣映画特有のそれを…

実写映画『進撃の巨人』公式サイト消失事件

www.shingeki-seyo.com これが実写映画『進撃の巨人』の公式サイトのURLなのだが、何の気無しにアクセスすると見られなくなっていた。

映画は自由でいいと鈴木清順から勝手に教わった

以前、樋口真嗣の監督、特技監督作を網羅しようとしていた時期がある。『八岐大蛇の逆襲』、『ミカドロイド』など購入するには比較的割高、近場のレンタル店に並んでいない作品は除いて。そんな中で観たのが2001年に公開された『ピストルオペラ』だ。

『シン・ゴジラ』に足りないもの、それは製作者のイジワルである

初日でIMAXを2回、その後に1回。計3回。8月5日現在、『シン・ゴジラ』を劇場で観た回数である。1回目は正直「う~ん」となった。予告の印象からドが付く位のシリアス調なんだろうな、と予想していたからである。実際はコミカルなシーンも多々ありの見方によ…