ワイルドサイドへの執着

童子の時は語ることも童子のごとく、思ふことも童子の如く、論ずることも童子の如くなりしが、人と成りては童子のことを棄てたり

実写映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』について

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 写映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』を初日の一番早い時間帯に観に行った。感想としては「予想以上」というのが正直な所だった。

特にラストの巨人対巨人のシーンは、平成「ガメラ」シリーズの樋口真嗣が戻ってきたとすら感じた。巨人が人を喰うシーンは身の毛もよだつほど恐ろしかったし、超大型巨人も巨大感が出ていたのではないか、と思う。ドラマ部分も原作、アニメはチラッとしか見たことがなく、ストーリーもWikiで少し知っている程度なのだが、きちんと成立していたと「個人的には」感じた。個人的にはというと匿名掲示板やSNSを見ると「特撮は良かったがドラマ部分は駄目だった」という意見が目立ったからである。過去の樋口真嗣監督作品『ローレライ』や『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』もストーリー、ドラマ面で酷評されているのを見かけるが、個人的にはアリだったのでそれもあるかもしれない。かつての東宝の怪獣映画『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』をしきりに出す人がいるが、やはり自分もそう感じた。『サンダ対ガイラ』も前作『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』も好きな映画なので、今回の『進撃の巨人』が好みの映画になるのも必然だったかもしれない。『サンガイ』が特撮映画ファンの中で語り草になっている点は色々とあるが、その一つに「巨大な人型の怪物が襲ってくる」点にある。劇中に航空襲撃シーンがあるのだが、そこでガイラが人を喰うシーンがある。長年特撮映画のトラウマとして語り継がれているシーンだが、今回の『進撃の巨人』の巨人が人を喰う画はそこを何倍も怖く、恐ろしく、生理的嫌悪を喚起させる映像になっていると感じた。怪獣が襲ってくるのも怖いが、巨大な人型の巨人が襲ってくるのも怪獣とは違うベクトルでの怖さがある。対巨人兵器「立体起動」は、予告の時点で各所で色々言われたが言うほど悪くないと感じた。実際の映画を観ると、縦横無尽に立体起動で飛び回る人間の姿が存分に見ることができるようになっていた。パンフレットに今回の実写版は「実際に立体起動で人が飛んだらどうなるか?」の部分に注力している、と書いてある。アニメや漫画と比べると、なるほどアニメ版のようにケレン味を効かせた立体起動ではなく、ある程度リアルさを追究した立体起動になっていると感じた。脚本部分には映画評論家である町山智浩が参加しているのだが、映画の内容を見る限りかなり密接に関わっていたのではないか、と感じた。よく町山氏の映画評論は見たり、聞くのだが、それからわかる町山氏の性格、思想が脚本部分にもかなり反映されていると思う。いわば「町山成分」が多分に入っていたのだ。キャラクターはオリジナルのシキシマが気に入った。原作のリヴァイより好きかもしれない(前述したようにそこまで詳しくないが……)。またこれもオリジナルのサンナギというキャラがいるのだが「こいつが一番強いんじゃないか?」という暴れっぷりには笑った。原作にもいるハンジは、石原さとみの怪演が見事だった。2014年ハリウッドゴジラ(ギャレゴジ)の芹沢博士のポジションだと言える。『日本沈没』で樋口監督が描かなかった「極限状態の性」もきちんと描かれていた。巨人のエグさ、エロシーンも含めて、なんだが東宝映画ではなく往年の東映映画のように感じられたのだ。最後にエレンが目を覚まし「進撃の巨人」のタイトルバック、そこからの伊福部昭を意識した重厚な音楽には感動した。エンドロールはSEKAI NO OWARIの「ANTI-HERO」だったがまぁ許容範囲だった。総括すると星4つ、80点といったところだろうか。最後にスタッフの発言で炎上というのがあるが、あまり幻滅させる発言は控えてほしい、と願う。