ワイルドサイドへの執着

童子の時は語ることも童子のごとく、思ふことも童子の如く、論ずることも童子の如くなりしが、人と成りては童子のことを棄てたり

『アイネクライネナハトムジーク』――人と出会ってみよう

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 面に一人の男がいる。その男は何やら通り過ぎる人々にアンケートを実施しているようである。しかし上手くないのか中々捕まらない。街頭モニターから賑やかな音が聞こえる。フッ……と夜の街で空しくなるような、手を止める。

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『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』――もしかしたら『エンドゲーム』が日本で作られない理由なのかも知れない

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 く考えれば「お前達の平成って……醜くないか?」も変な台詞だ。元号である平成の歴史を指して醜いとする言説はニュースや週刊誌で評論家等が語るならまだ理解できるが、実際に本作『Over Quartzer』で発するのは子供向け特撮ヒーロー映画のラスボスなのである。

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『天気の子』――少年よ、銃を取れ(取らない)

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もしも罪を犯し 世界中敵にまわしても あなたと眠る夢を見続けてたい
――aiko 「あした」


 ー、映画、ひいてはフィクション全般は野蛮であってほしいと願っている。教科書で教えてくれるような道徳的で社会の規範に沿った「良い」とされる概念をブチ破って、実現し得ない心の解放とでも言うべきカタルシスをもたらす、故にとても力強い。法律を破ろうが世界を滅ぼそうが何をやっても良い。かといって倫理と論理を無視した無法地帯でもない。だが、基本的に倫理と論理とはやはり相性が悪いものであってほしい。

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『岬の兄妹』――走れない現実

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 れは何事もそうなのだが、人は自然と慣れるように出来ている。最初は心に留めておいたのに時間が経つにつれて忘れたりどうでもよくなったりする。嬉しかったり苦しかったり、時々の様々の感情を忘れていくのも慣れの効用の一つである。

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『こんな夜更けにバナナかよ』――理屈ではない世界の仕組みについて

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わがままもいっぱい言っただろうけど、でもそのわがままというのは、あくまで健常者から見たわがままなんですよね。
『こんな夜更けにバナナかよ』って、動けないなら、食べるなよっていう論理なんだよね。
――「キネマ旬報」2019年1月上旬特別号 大泉洋グラビアインタビュー P94より


 害者にまつわる言説は常に繊細が求められる。映画史における障害者と言えば個人的筆頭に上がるのは「座頭市」だ。盲目の侠客である座頭の市が仁義に乗っ取って悪人を斬りまくるアクション時代劇だが、背景にあるのは「健常者に馬鹿にされ続け、見返してやるためにめくらめっぽうで身に付けた業」によるものという深く暗い断絶である。

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フォーラム福島「現実対虚構inフクシマ 樋口真嗣・丹治匠トークライブ」レポート

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 1月28日にフォーラム福島で行われた「現実対虚構inフクシマ 樋口真嗣・丹治匠トークライブ」に行ったのであった。

www.forum-movie.net

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『あゝ、荒野』――殺されるくらいなら、ブッ殺してやる

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 篇、後篇の形式で公開され、その合計の上映時間が305分(5時間5分)という事から分かる通り、まず歪な映画であるのは間違いないだろう。新宿新次(菅田将暉)とバリカン建二(ヤン・イクチュン)を取り巻く人々の物語というだけで十分なのに、「自殺抑止研究会」なる学生団体の物語が、唐突に脈絡なく挿入されている事も拍車をかけている。

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