ワイルドサイドへの執着

童子の時は語ることも童子のごとく、思ふことも童子の如く、論ずることも童子の如くなりしが、人と成りては童子のことを棄てたり

この無料(タダ)で読める百合漫画が凄い!2023

 合コンテンツも年々盛況になってきている昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか。その実態は有料のものはもちろん、インターネットを使えば無料でも良質の百合を摂取出来る程度には充実してきています。Twitterやpixivに日々UPされる一次創作や二次創作を追っかけるだけで、月刊の「百◯姫」を買う必要などないくらいに。ということで、去年に引き続き無料(タダ)で読めてしまう百合漫画作品を厳選して紹介していきます。

参考にしたサイトははてなブックマーク、百合ナビなど。なお、百合の解釈は人の数だけ存在すると言われてはいますが、あくまで筆者の基準は「女の関係性」ならバーリトゥード(何でもあり)です。ゲテモノ上等です。中には無料公開期間が終了してしまっている作品もあると思いますが、日付は2023年1月14日付です。

 

 

かくも素敵なヌミノーゼ/遥川潤

shonenjumpplus.com

殺伐百合ばかり発表している遥川潤先生の最新作。海外小説の翻訳や映画の字幕のような台詞回し、何かしらの引用、夢と現実が入れ子構造になっているハイコンテクストな作品となっており、何回読んでも理解が追い付かない。お、俺馬鹿だから分かんねぇけどよ……ここで描かれているのは“感情”なんじゃねぇか? 夢幻の先に待ち受けるラジオ(蓄音機)は『CURE』ぽいすね。

 

 

ぼこぼこどっかーん!/おたき

comic-action.com

可愛らしいタッチに反して、教室の距離感を冷たく示すタイトルバックから痺れる。「みんな死ねばいいのに」を百合でやってくれるのも喜ばしいが、それより爆弾を取り上げた後に安易な和解などせず、一方的に殴って血が出て心情を吐露する流れに驚かされる。最後まですれ違ったまま「そう言えばクラスのあの子はどうしてるんだろう」感傷で締めるこの読後感は、ヒ、『ヒメアノ~ル』(実写版)!? イノセントは取り戻せないからこそ美しい。

 

 

イトが搦ム/一七八ハチ

comic-zenon.com

メランコリックな物語とフェチを感じる身体の描線がマッチしている、『悪い種子』系のサイコホラー。子供って純粋に見えて恐ろしいですね、怖いですね……という体にはなっているが、これ美人教師と問題視生徒のハートフルおねロリだろ。シリアスにギャグをやっているようなおかしさが全編にある。それを意図しているのかどうかは分からない。ともかく、愛情を知らないが故に一方的な独占欲をぶつけてしまう、美しいね。

 

 

サウダージにくちづけて/渡部大羊

shonenjumpplus.com

NTRやんけ~~!! 志村貴子フォロワーなのは一目瞭然であるが、それにしたって良いものは良い。「好き」の中身によるすれ違いではあるが、過去への感傷も合わさっているので読者を限定しない普遍的な恋愛漫画に仕上げている。

 

 

ふたりの告白/西瓜士

comic-days.com

個人的な事情で参っている時に読んで勇気を貰った。「法律も神様も私たちのためには作られていないらしい」「だったら悪いのは法律と神様じゃん」強い、強い、強過ぎるって! これから二人を待ち受ける未来を安易に楽観させず、それでも前を向くことを肯定するラストが素晴らしい。クソったれな世界と戦っていくためのアジテーションを感じた。ババアに救いを求めるのは余計な気がしなくもないがそれも優しさか。演出も隅々まで冴え渡っている。地方のドーナツ屋にしては手取りが高過ぎるという指摘は的外れで、二人が(屋上で)見ている世界の狭さのイメージから逆算して選ばれたのが真ん中に穴が開いているドーナツの形状。それを食べてしまう転換も含めてイメージの推移が映画的。西瓜士先生は前作である『インサイド・ザ・ボックス』でも百合を描いており、こちらも必読。以降も精力的に作品を発表している(非百合ではあるが……)。要チェックの作家だと言わせていただく。

 

 

再婚ギャラクティカ/鈴野スケ

www.sunday-webry.com

わずか8ページの分量をスラップスティックなノリで押し切ってみせる。キメ画で眼がキラキラになって宇宙が映る……ギャラクティカ。百合と宇宙は相性が良い。

 

 

氷解く/佐伯一

www.sunday-webry.com

上記の『ふたりの告白』のように現実を直接扱うのではなく、魔女狩りというモチーフで排他的な社会を描く。人間の善性は信じられないが百合ならば信じられる。『水星の魔女』といい、百合と魔女は相性が良い。

 

 

ケモノ/上田さかひら

shonenjumpplus.com

こっちは獣人。生々しいパンチラから始まる冒頭に綺麗ではない生活感がある。閉塞感のある街を映さず、台詞の訛りで淀んだ空気を表現。地方なんてどこもろくでもないですからね(偏見)。死ぬためではなく、助けるために飛ぶ。かつて彼女が見上げた姿は中野さんではないことにむしろ救いがある。ジョジョ4部の謎のリーゼント頭と同じ。それにしても学校の屋上は万能だ。

 

 

そこに虹がなくても/東山千

shonenjumpplus.com

小学生の頃、同じ教室にいた女子はこんなことを考えていたのか。私なんてガンダムのスペックがどうのみたいなことしか頭にないパッパラパーだったというのに、これでは天と地の差、最早同じ生物ではない……。女子小学生は本当にこんな高度な言葉を使ってはいないだろうが、演出として語彙があればこのように話すだろうという仮定をされた上でこうなっている。誰にでもあるからと軽視せず身体の成長と向き合う姿勢に好感。

 

 

モデルチェンジ/市川ヒロミ

tonarinoyj.jp

ルッキズムとヒーローものを組み合わせる発想がブッ飛んでる。怪獣と美醜を同一線上の問題として捉える。白玉さんは自己犠牲を厭わない典型的ヒーロー気質だが、今作で彼女が救うのは市井の人々というよりは、自分のルックスにコンプレックスを持つアイドルだ。連載にするのは難しいだろうが、でも女の子が醜い怪獣になって地球を守るバディものという設定は使えるぞ!

 

 

 例によってジャンプ+の作品が多めだが、無料の縛りがあるのでしょうがないです。扱っているモチーフこそ違えど、抑圧的な社会といかに向き合うかという題材が多い。やはりこれからはガール・ミーツ・ガールしかない。ということで、目ざとく無料期間に読む乞食ムーブもいいけれど、買える範囲でお金は積極的に落としていくのも忘れないようにして、今年も百合を楽しんでいきましょう。

 

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