ワイルドサイドへの執着

童子の時は語ることも童子のごとく、思ふことも童子の如く、論ずることも童子の如くなりしが、人と成りては童子のことを棄てたり

『ワンダーエッグ・プライオリティ』第3巻 Blu-ray/DVD 完全生産限定版特典のオリジナルドラマCDを聴いてくれという話

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 更だが、2021年冬アニメとして放送された『ワンダーエッグ・プライオリティ』Blu-ray/DVDの第3巻が8月25日に発売された。

問題となった最終回及び特別編を収録した最終巻ということで、特典としてドラマCD「ワンダーエッグ・アニバーサリー」が収録されているのだが、これがとても良いものだった。便宜上の最終回となる第12回では大方の予想を裏切って、バッドエンド的な結末が容赦なく展開され、突然告知されて数か月待たされた特別編では、一時間の枠を取りながら前半は又総集編、後編こそは新規だったが、伏線を堂々と放り投げて絶望に沈んだような、これまで付いて来た視聴者を突き落とす凄惨な内容となっていた。自分はこの苦み走った結を肯定するしかなかったが、だがしかし魔法少女ものの中で少女達のキャッキャウフフ、からの希望に満ち溢れ伏線も丁寧に回収されたウェルメイドなアニメを望むならば、大ブーイングが起こっても仕方がないと思わせるものではあった。その裏で円盤の最終巻にはドラマCDがあると宣伝されたが、そこまで付き合ってられるかと一蹴するのがむしろ普通の反応だろう。自分は当然付き合ったが、果たしてそのドラマCDとはどのようなものであったのか。

あらすじ
アイの母・多恵と、沢木の結婚式を控えたアイたちは、
パーティーに着ていく服を探しにショッピングモールを訪れる。
アイ・ねいる・リカ・桃恵が過ごした、とある日の物語。

https://wonder-egg-priority.com/news/?article_id=58343

 

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 「ワンダーエッグ・アニバーサリー」は、我々が本来望んでいたはずの『ワンダーエッグ・プライオリティ』だった。アイ・ねいる・リカ・桃恵がパーティーに備えてショッピングを楽しみ、試着し合ったりする。一つのベッドに四人で寝るお泊り会をやったり、勉強会の計画を立てる。ひたすらなキャッキャウフフ。そして最後は望まずに元凶となってしまった少女を救ってハッピーエンドだ。本当にこういうお話になっていて、まさしく皆が見たかったものは「これ」だったと思うのだ。問題は時系列で、ママと沢木先生の結婚式が開かれるということであるから、特別編後(転校こそしたが関係は継続したとみるべきか)なのは分かるとして、何故か四人が疎遠となっておらず、仲が良いままなのだ。ねいるとの決定的な別離も無かったことのようになっており、どういうことなんだと考えると、恐らく「パラレル」のハッピーエンド版が「アニバーサリー」なのだ。放送当時の感想として「ノベルゲーのノーマルエンドみたいだ」というようなものがあったが、意図的に分岐した可能性を描いたのだと思う。あるいは野島伸司の贖罪、罪滅ぼし。わかりやすいハッピーエンドじゃなくてごめんね、と付き合ったファンへのご褒美のようなものだ。改めて、標準的なものを描けるにも関わらずあのような結末にしてしまう業の深さが恐ろしいと言える。続編があるとすれば、これを1クールなりに延ばして展開されるのではないかと予想される内容で、「神様みたい」と気になる台詞も出て来るが、たぶん野島伸司の脳内ではきちんと裏が考えられているだろうから、その背景を全部開示して欲しい。構成としては尺は20分程度で、チャプターは13に区切られている。簡素ながら本編のように、シーンを細かく区切って時系列を曖昧にする手法が生きている。女子中学生的なディティールとして、口分田や墾田永年私財法が登場するが、その他、年頃的なリアリティは文芸にクレジットされている豊田百香の功績もあるのかも、と思う。チャプターの中には自分がさながらエッグの少女になって四人に守られるという、音声作品のような聴き手主観のものがあり、ここだけでも悶絶ものである。私も負けざる戦士たる女の子達に守られたい、ホントに。


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